安曇野 満願寺の「地獄極楽変相之図」


 お地蔵様はいつでもどこでも子供たちの味方である。
「一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため。三つ積んでは…。」 親より早く死んだ子供はどんな事情であれ、まず賽の河原に向かう。赤子や幼児に何の罪があるというのか。それは親より早く逝くという「逆縁」という罪になるのだ。賽の河原で一つ二つと石を積み塔を作るのだが、高くなったところに鬼が現れ、金棒で崩してしまう。そしてまた、積み上げては崩され、積み上げては崩され…。そんな時、お地蔵様は泣き叫ぶ子供をあやしなだめてくれるのだ。だからほら、お地蔵様の像の足元には幼子が纏わり付いているよね。よだれ掛けもしているし。


 これが三途の川で衣類を剥ぎ取る奪衣婆。木に引っ掛けて今までの罪の重さを計っている。左下は「血の池地獄」。産後の肥立ちが悪く亡くなった女性だけが堕ちる地獄。でもちゃんと救う手立てはある。「血盆経」とい経典を投げ入れると蓮の台に乗ることができ、極楽浄土へ往生できるという。


 いよいよ閻魔大王の審判を受ける。悪人は釜茹でにされたり、餅つきのように杵と臼でつかれたり、「浄瑠璃(じょうはり)」という鏡に過去の悪業を見せ付けられたり、杖の上に乗せられた男女の首「人頭杖(にんづじょう)」に今までの善悪をチクられたり、と人それぞれに相応しい地獄に堕としてくれる。地獄行きが決まった者は、それはそれはとっても過酷で残虐で凄惨な地獄が待ち受けている、らしい。 いつの間にか地獄論になってしまった。