飯縄山の十三石仏
姉は流行りの山ガール、母は昔の山ガール、私は山に興味なし。「飯縄山の登山道に十三石仏があるんだって!」という姉の言葉に騙されて登ってしまった、飯縄山。標高1,917m。地元の小学生が遠足で登る山と甘く見ていた私が馬鹿だった。どこが初心者向けの山なんだ!登山早々私は後悔した。タウンシューズで登る山ではないと。
登山道入り口の一の鳥居。
行き交う人達は皆、登山靴に登山リュック、手にはポールを持ち、しっかり登山スタイルをしている。もちろん同行者の姉も登山スタイル。私だけ浮いている。 そうだ!私は十三石仏を見に来たんだ!他人の恰好などどうでもいい。
まず最初におわしたのは何だか毛むくじゃらの石仏。宝刀持ってるからお不動さん?いや、鳥居があるからこの飯縄山の主、飯縄権現様かもしれぬ。初登山の無事を祈って手を合わせる。
三番の文殊菩薩様。仏の智慧(般若)を象徴する菩薩様。
小高い丘に四番の普賢菩薩様。
第六番、弥勒菩薩の周りは足場が悪く、露出した木の根っこに躓いた。
弥勒菩薩様はお釈迦様の後任を約束されている菩薩様。釈迦入滅後56億7千万年後に現れ、釈迦の救いに洩れた人々をことごとく救ってくれるというが、あまりにも遠すぎる。「今」を救ってほしいのだが。 ここでちょっと雑学。みんなのヒーロー「ウルトラマン」は弥勒菩薩を模写している。
九番の勢至菩薩様。一周忌の守り本尊。
十番、阿弥陀如来様は小高い丘の上で私達を見守っていた。
番外の馬頭観音様。皆の道中を見守っておられます。田舎には馬頭観音がやたらに多い。山あり谷ありの道中には人もくたばり、馬や牛も命を落とすことが多かったらしい。「為牛馬」と刻まれた石碑をいくつか見たことがある。
十二番、苔むした大日如来様。
えっ、これが天狗の硯石?天狗って人間と同じぐらいの大きさだよね。巨人の硯石ならわかるけど。
十三番、やっと出会えた最後の虚空蔵菩薩様。山頂までもう少し。
奥の祠には何とも愛くるしい、カラス天狗の飯綱権現様がおわした。んっ、平成二十六年? 未来からの参拝者も来るのか、ここは。
開けたところにでたぞ。山頂まであと10分。まだなのかい。もうひと頑張りだ。
リンドウ
天気の良い日には、遠く富士山まで見えるというが、曇っていて近くの山もかすんでいる。
山頂には岩がごろごろ。通常は2時間半で登れる山だが、私たちは石仏があるたびに立ち止り、写真を撮って感想述べてと寄り道が多かったので、3時間半かかってしまった。登ったということは降りなきゃならないってことだよね。えっ、また2時間歩くの?
しかも山頂に向かって、霧が登り始めている。こりゃ急いで帰らなきゃ。帰りは写真も撮らず足元だけ見て2時間で下山した。
こうして私の初登山は終わった。石仏がなきゃ登れなかっただろう。一番、二番、三番とおわすのだから、やっぱり十三仏は全部見たい。そこまで行ったら山頂まで行かなくちゃ。登りは太ももが痛く、下りは靴の中の親指が痛む。帰ってから見てみたら親指の爪の根元に赤あざができていた。普段の運動不足を痛感した。当分山は登らないだろうと思っていたのだが、一週間後、登山用の靴を買ってしまった。また登る気でいるみたいだ。その「また」というのがいつになるのかは、わからないが。