京都の二つの蓮華寺(2) 三宅の蓮華寺

 京都には蓮華寺が二つあります。すでに訪れた右京区の御室の蓮華寺には但唱の五智如来像があります。もう一つの左京区の三宅の蓮華寺は、紅葉が有名だということで季節外れではありますが、山号が「帰命山」であることと石仏群があることから、「もしかして、木食関係?」と気になり行ってみることにしました。

蓮華寺(左京区)wikipedia


 下鴨神社近くの出町柳から叡山電車に乗って、比叡山の手前の三宅八幡駅で降ります。ここから高野川沿いに10分ほど歩きます。


 蓮華寺は、応仁の乱で荒廃した寺を、加賀藩重臣今枝近義が寛文2年(1662年)に再興したそうです。但唱が鳴滝に五智如来像を安置したのが寛永13年(1636年)、地蔵菩薩と千手観音を安置したのが寛永18年(1641年)で、同年6月没(年表)ですから、残念ながら、木食僧にはまったく関係がないようです。「帰命」とは己の身命を仏に捧げることであり、仏教用語の普通名詞ですから、山号としては別に珍しくもないわけです。


 静かな苔寺です。


 山門を入ってすぐ左に石仏群があります。これらは京都市河原町線の敷設工事に際して発掘されたものだそうです。


 目鼻立ちのはっきりしない輪郭だけの石仏がわんさか並んでいます。


 しずく形の拝観券(400円)。天上天下唯我独尊ですね。

洛北 蓮華寺

 蓮華寺は、元西八条塩小路附近(今の京都駅附近)にあった浄土教系の古寺で、応仁の乱後荒廃していたのを、寛文2年(1662年)、加賀前田家の老臣今枝民部近義が祖父今枝重直の菩提のために、この地に移し再興したものである。(蓮華寺造営記、帰命山寺記)
 再興の際に石川丈山狩野探幽、木下順庵、黄檗隠元禅師木庵禅師等当時の著名文化人が協力している。(諸堂の様式碑文、什物等)
 尚、本堂、鐘楼堂、井戸屋形、庭園は創建当時のままであり、小規模ではあるがいずれも文人の残した貴重な文化遺産である。


 すると、床の間の右の板絵は……


 狩野探幽でしょうか。


 詩仙堂を開いた石川丈山作と伝わる回遊式の庭園です。手前の横長の石は「舟石」といいます。向こう岸を浄土に見立てた「出舟」ではなく、こちら側に向かう「入舟」は珍しいそうです(wikipedia「蓮華寺」参照)。


つくばい(蹲)。手水鉢で手を洗うときにつくばう(しゃがむ)からその名がついたそうです。


土蔵の扉が誘うように開いていました。


 スギゴケ