閻魔と奪衣婆、そして十王(総集編)
冥界の主神、閻魔大王(えんまだいおう)と、三途の川岸で亡者の衣類を剥ぎ取り罪の重さを計る奪衣婆(だつえば)。閻魔大王と共に審判を受け持つ十王たち。 「地蔵と閻魔は一(いつ)」と言われるように、閻魔大王は地蔵菩薩の化身であり、共に本地は阿弥陀如来。地蔵菩薩はその慈悲(じひ)を、閻魔大王はその忿怒(ふんぬ)を示現している。
1月16日は閻魔王の斎日である。地獄の釜の蓋が開く日とされ、閻魔詣でをしようと長野市松代に向かった。
「龍泉寺」 閻魔大王図御開帳。襖と比べるとわかる通り、壁一面の大きく立派な掛け軸に圧倒される。
松代という所は城下町であり、神社仏閣が多数あり、寺巡りを趣味とする私にはたまらない。が、今回は閻魔を詣でると題したのでお隣の町、篠ノ井の「典厩寺」に向かう。あの川中島合戦で討死した武田信玄の弟、武田典厩信繁を祀った寺である。ここには日本一大きな閻魔大王像がある。
もちろん閻魔様もすごいと思うが、私としては天井に描かれた三十三変化観音図が好きである。
その他、以前撮影した閻魔と奪衣婆の数々をご覧あれ。
長野市豊野 「宝蔵院」 この奪衣婆、猫…だよね…。
伊那市西箕輪 「仲仙寺」 奪衣婆…だよね…。
長野市 苅萱山 西光寺 「六道地獄絵」の絵解きをしている。縁日やお盆頃にも絵解きをするが、個人でも住職夫人が在宅なら、たとえ相手が一人でも、こちらの「苅萱上人絵伝」と共に絵解きをしていただける。要志納。
安曇野 満願寺 「地獄極楽変相之図」。お地蔵様はいつでもどこでも子供たちの味方です。
「一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため。三つ積んでは…。」 親より早く死んだ子供はどんな事情であれ、まず賽の河原に向かう。赤子、幼児に何の罪があるというのか。それは親より早く逝くという「逆縁」という罪になるのだ。賽の河原で一つ二つと石を積み塔を作るのだが、高くなったところに鬼が現れ、金棒で崩してしまう。そしてまた、積み上げては崩され、積み上げては崩され…。そんな時、お地蔵様は泣き叫く子供をあやしなだめてくれるのだ。だからほら、お地蔵様の像の足元には幼子が纏わり付いているよね。よだれ掛けもしているし。
これが三途の川で衣類を剥ぎ取る奪衣婆。木に引っ掛けて今までの罪の重さを計っている。左下は「血の池地獄」。産後の肥立ちが悪く亡くなった女性だけが堕ちる地獄。でもちゃんと救う手立てはある。「血盆経」とい経典を投げ入れると蓮の台に乗ることができ、極楽浄土へ往生できるという。
いよいよ閻魔大王の審判を受ける。悪人は釜茹でされたり、餅つきのように杵と臼でつかれたり、「浄瑠璃(じょうはり)」という鏡に過去の悪業を見せ付けられたり、杖の上に乗せられた男女の首「人頭杖(にんづじょう)」には今までの善悪をチクられたり、と人それぞれに相応しい地獄に堕としてくれる。地獄行きが決まった者は、それはそれはとっても過酷で残虐で凄惨な地獄が待ち受けている、らしい。 いつの間にか地獄論になってしまった。