破風高原への道

 母が「五味池破風高原のりんどう祭に行きたい! 小雨決行!」と言うので、台風18号が近づく雨の中、私たちは無謀にも山に向かって車を走らせたのでした。「須坂市街地から車で50分」、「菅平に行く道の北の道」、私たちに与えられた情報はこれだけですが、十分です。道は一本しかなく、間違えようがありません。


 山道に入ってほどなく、「第80カーブ」、そして「第79カーブ」の看板を通り過ぎました。当然、第1カーブは破風高原入口にあるのでしょう。飯縄の七曲りどころじゃない、ここは八十曲りで、しかも、雨降りで、ガスっている……。考えただけでも気分が悪くなってきます。ときどき下ってくる対向車とすれ違うだけでも命がけです。豊丘ダムの看板もありましたが、崖下は霧に隠れて見えません。


 第17カーブまできたところで、祭りのスタッフらしきおじさんが車から降りてきて、「りんどう祭りは中止です」と教えてくれました。会場には鍵をかけて入れなくしてしまうのだそうです。破風高原はいつでも観光できる場所ではないようですね。母がそれでも(だからこそ)行きたがって、「合羽もってきました」と食い下がりましたが、「ムリムリ、ここまで(と胸あたりを手で示して)の藪の中を30分歩くんだよ」と笑われました。ねえ、台風なんだから、小雨決行とか言ってる場合じゃなくて、「いのちをだいじに」のレベルなんだよ〜と母を説得。